2019年11月9日土曜日

NovartisのAMD治療薬(Beovu)


満を辞してのノバルティス。ウェット型加齢黄斑変性治療薬のBeovu投入!これまで市場にある加齢黄斑変性治療薬は抗VEGF抗体であり、有名なのは米Genentech社の創製したルセンティス(一般名:ラニビズマブ)と米Regeneron社の創製したアイリーア(一般名:アフリベルセプト)であります。適用外使用として、アバスチン(一般名:ベバシズマブ)を使われることもありますが、市場としては、上記2製品が完全に独占。日本ではNovartisがアイリーアを販売しているので元々ノバルティスの製品というイメージがありますが海外ではGenentech社(Roche社の子会社)が販売。

どちらもVEGFをターゲットとした医薬品かつタンパク製剤のため、投与は眼球に直接注射。。。知人の眼科医にそんな「髙侵襲」な治療ってどうなんですかね、と聞いたら、えっ、硝子体注射(※眼球への注射のこと)は「低侵襲」ですよ!という回答が返ってきてびっくり。眼科医の世界だと、眼球の切開や、眼の後ろ側の硬膜を切ったりするのが髙侵襲で、眼球への注射は2-3分で終わるくらいで非常に「低侵襲」なんだそうな。

とはいえ、アイリーア、ルセンティスは1か月に1回の眼球注射のため患者さんの利便性などを考えて長期持続型の製品が開発されてきました。その一つが開発番号RTH258のBeovu(一般名:Brolucizumabu)アイリーアと比較したPhase IIIのHAWK試験とHARRIER試験では見事に非劣勢としての結果を取得。

ゾルゲンスマではやらかし気味のノバルティスですが、ALCON社の医療機器部門は切り離したし、これで加齢黄斑変性治療薬とともに眼科医薬品市場へのとっかかりをつかめることになるのではないでしょうか。






BiogenのMS治療薬


「biogen」の画像検索結果
Biogenはマサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置く医薬品メーカーで神経関連の医薬品に特化した活動が中心。今回の話は、経口フマル酸塩のヴメリティ(Vumerity、一般名diroximel fumarate)について。最近の記憶ではエーザイと共同で開発を行っているアルツハイマー病治療薬候補のアデュカヌマブですが、それはまた今度。



そもそも、Vumerityがこのタイミングで承認される意味というのはもともとの経口フマル酸塩であるテクフィデラ(Tecfidera、一般名Dimethyl Fumarate)がジェネリック医薬品の参入にさらされているから。テクフィデラの売上げは、2018年4,274百万ドル、日本円換算でざっと4500億円というところです。
(参照:https://www.biogen.co.jp/ja_JP/news-insights/japanaffiliatenews/2019-02-01-news.html)

それほど売上げの大きい医薬品なのでジェネリックメーカーが黙っているはずもなく、日系企業からは沢井製薬USAが2017年に承認申請を行っています。そんな中で、バイオジェンとしては何とかして後継品を発売したい、という思いですよね。
https://www.sawai.co.jp/files/press/2017/e9l5ctnuu2.pdf
医薬品の薬効としては、「酸化ストレス,炎症,生体異物スト レスを軽減する重要な細胞防御機構であるnuclear factor erythroid-derived 2 related factor 2(Nrf2)転写経 路の活性化を介し,末梢および中枢神経系細胞で,抗炎 症作用ならびに神経保護作用の両方を促進すると考えら れている.抗炎症作用として,Th1/Th17(炎症型)のバ ランスをTh2(抗炎症型)への転換,マクロファージ, ミクログリア,アストロサイトの活性化抑制と免疫細胞 の中枢神経系の浸潤抑制,炎症性サイトカイン産生の減 弱,神経保護作用として興奮毒性や酸化ストレスからの 保護が期待されている。」

しかしながらこの医薬品の面白いところは物質特許がない、点であります。
フマル酸ジメチルはその名の通り、非常に簡単な構造です。
「フマル酸ジメチル」の画像検索結果
分子量はなんと144。。。。

そんな化合物であっても世界で4000億円以上を売る、ということは最近の抗体医薬や再生医療のトレンドと全く異なる非常に嬉しい内容となります。今回承認されたヴメリティ(Vumerity、一般名diroximel fumarate)もフマル酸ジメチルにちょっとおまけがついた構造。
関連画像
もともとのマーケットを持っているバイオジェンとしてはスムーズな切り替えを行いたいところでしょうし、これでしばらくは競争有意に立てるでしょう。しかし、RocheのOcrevusなどとの競争についてもウォッチしていくのがよさそうですね。