Biogenはマサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置く医薬品メーカーで神経関連の医薬品に特化した活動が中心。今回の話は、経口フマル酸塩のヴメリティ(Vumerity、一般名diroximel fumarate)について。最近の記憶ではエーザイと共同で開発を行っているアルツハイマー病治療薬候補のアデュカヌマブですが、それはまた今度。
そもそも、Vumerityがこのタイミングで承認される意味というのはもともとの経口フマル酸塩であるテクフィデラ(Tecfidera、一般名Dimethyl Fumarate)がジェネリック医薬品の参入にさらされているから。テクフィデラの売上げは、2018年4,274百万ドル、日本円換算でざっと4500億円というところです。
(参照:https://www.biogen.co.jp/ja_JP/news-insights/japanaffiliatenews/2019-02-01-news.html)
それほど売上げの大きい医薬品なのでジェネリックメーカーが黙っているはずもなく、日系企業からは沢井製薬USAが2017年に承認申請を行っています。そんな中で、バイオジェンとしては何とかして後継品を発売したい、という思いですよね。
https://www.sawai.co.jp/files/press/2017/e9l5ctnuu2.pdf
医薬品の薬効としては、「酸化ストレス,炎症,生体異物スト レスを軽減する重要な細胞防御機構であるnuclear factor erythroid-derived 2 related factor 2(Nrf2)転写経 路の活性化を介し,末梢および中枢神経系細胞で,抗炎 症作用ならびに神経保護作用の両方を促進すると考えら れている.抗炎症作用として,Th1/Th17(炎症型)のバ ランスをTh2(抗炎症型)への転換,マクロファージ, ミクログリア,アストロサイトの活性化抑制と免疫細胞 の中枢神経系の浸潤抑制,炎症性サイトカイン産生の減 弱,神経保護作用として興奮毒性や酸化ストレスからの 保護が期待されている。」
しかしながらこの医薬品の面白いところは物質特許がない、点であります。
フマル酸ジメチルはその名の通り、非常に簡単な構造です。
分子量はなんと144。。。。
そんな化合物であっても世界で4000億円以上を売る、ということは最近の抗体医薬や再生医療のトレンドと全く異なる非常に嬉しい内容となります。今回承認された
ヴメリティ(Vumerity、一般名diroximel fumarate)もフマル酸ジメチルにちょっとおまけがついた構造。
もともとのマーケットを持っているバイオジェンとしてはスムーズな切り替えを行いたいところでしょうし、これでしばらくは競争有意に立てるでしょう。しかし、RocheのOcrevusなどとの競争についてもウォッチしていくのがよさそうですね。